今 敏監督 逝く

 昨日のいきなりの訃報でびっくりした。今日付けで遺書がネット上にアップされるまでは、それまでのtwitterやブログの状況から推定して、どうも末期癌だったようだとは理解した。まだ46歳、若いからこそ体調がおかしくて検査してもらったら末期癌だったのだろうと想像し、むしろやるべきことを最後の時間で一気にやりきっていたのだろうと考えていた。
 すると遺書をよんだら想像を遥かに超えていた。
 三ヶ月でここまで死ぬ準備ができるものなのか…昏睡状態になったりしているから実際実働時間は二ヶ月程度であろう。
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元々アニメの描写にかけてもアニメでしかできない映像を作りつつ、萌えアニメの類でなく普通の映画として作るリアリズムを感じさせる、日本のアニメ映画を発信し続ける偉大な監督だった。どちらかというと大衆映画的なつくりや流れるような動きを求める監督だったので繰り返し見たい感動的なストーリーとかが追求されているわけではないのだけれど。
それでも私は千年女優が大好きでDVDを買ってよく見ていた。
最後の台詞「だって私はあの人を追いかける私がすきだったんだもの」小山茉美がさらっと言ってしまうわけだ。重みも全くなく。
重みがあれば「死ぬ直前にようやく気づいたんだけどただ自分に酔っていたのね」という感慨深い感覚になる。
重みがない場合には、
「もうあの人を追いかけても今の私を見てもあの人は私に気づかないほど私は年をとってしまった。あの人を追いかける私を演じてももう演じる私を好きになることはできない」=「好きな自分になれないから引退した」
実際重みは全くない。聞かされた作品中の映画人の社長はさぞ複雑だっただろうと。
ちなみにこの最後の台詞は「“真実の騙し絵”を受け入れられるかどうかを唐突に投げかけられ、日本制作の映画ではあまり馴染みのない終わり方に導く不思議なセリフなのだ。」と昔監督がいってたw

ここまでリアリストというか人を食った人が、目の前の死にあまりにも前向きにやれることを全てやりきろうとするそのパワーに驚かされる。

昨夜は千年女優を見ながら追悼した。