NPCは崖っぷちに

太陽電池製造装置メーカーのNPCが業績の下方修正を行った。
原因は2010年に買収したドイツ:マイヤー社の清算を行うことになったことによる特別損失などであるが、そもそもの原因は太陽電池市場の低迷である。
http://contents.xj-storage.jp/contents/62550/T/PDF-GENERAL/140120130709088277.pdf

まず2010年にドイツへ投資すること自体、見る目が全くない。
欧州、特にドイツではFIT価格が導入されてから毎年価格を下げられており、2010年に買収した時の状況はマイヤー社が倒産して整理された会社を買ったものであるし、2012年になるとかつて世界最大の太陽電池メーカーだったQセルズまで倒産した。経営環境が日々悪化するマクロ環境だとわかっていながら投資に踏み切ったところがまず失敗。
ドイツでは太陽光発電の買取価格は、この数年で3分の2に下がり、小規模設備は15.07セント/kWh、平地設置設備は10.44セント/kWhとなっている。また、今秋には、平地設備設備の買取価格は、初めて10セント/kWh以下に引き下げられる。
太陽光発電の買取に要する費用は2010年より85%低下している。その費用は、2010年が22億ユーロだったのに対して、2013年は3億ユーロとなる見込みだ。
つまり買取価格の上ではドイツではまもなくグリッドパリティに達するのである。で、コストは?と言えば全く追いつけていない。つまり火力発電のメーカーはROS(売上高営業利益率)が10%を越えるところは珍しくないが、太陽電池パネルのメーカーは利益がでていないどころか赤字会社が大半で倒産寸前の会社多数の状況である。

話がそれた。
二つ目として、日本でFIT価格が導入された後、急激にパネルメーカーが投資を増やすことを期待していたようだが、そういう事象は起きなかったことがある。そもそも太陽電池パネル製造メーカーが過当競争になっていた為である。なぜか?最大要因は中国メーカーの参入である。太陽光発電はそもそも石炭火力発電やガスタービン火力発電と比べて発電コストで全く勝負にならず、中国で設置されることはあまりない。FIT価格を導入する環境対策を重視する国家でしか設置メリットがないのである。すると中国メーカーが世界シェアを増やしてきた時点で、自国産のパネルの優先設置でも義務付けなければコストメリットで中国メーカーのパネルを設置するようになれば欧州メーカーはひとたまりもなかったのである。
欧州では中国からのダンピング輸出を主張して輸入量の制限や関税を上げる等の対応に走った。で、ダンピングなのか?と言われたら世界的な過当競争による価格下落で中国企業が過剰投資を行ったつけなのである。それを欧州が払うのはおかしいというのだが、中国企業がつくれそうなものについてFIT価格等で誘引することがそもそも危険なのである。鉄鋼の過剰投資などを見れば明らかだろうに。
NPC愛媛県は今年2億円の補助を行ったようだが、このままの減収状況では経営再建は程遠いだろう。

あと日本のFIT価格についても述べておこう。
日本は民主党政権がFIT価格を導入するときに同じ失敗をした。多分民主党シンパの京セラの稲盛氏らの意見が通っていたのだろうが、高めに設定しすぎたのである。最終的にFIT価格は電気料金を支払う企業・国民が負担するものなのに、民主党は税金でないからとかなり甘い見積もりを行ってしまったらしい。(ドイツの当初導入価格と同じぐらいに設定したもの)
高すぎるかどうかは参入者を見れば明らかである。リース業者のオリックスは投資スタイルとして正しいが、ソフトバンク孫社長が参入に躍起になったことで失敗は明らかである。あの収益に貪欲な孫社長がこれはいけると踏んだということはようは高すぎる証左なのである。
電力会社はこの結末が電気料金上昇だとわかっているので、設置認可量を増やさないことを心がけるようになった。方法は

1.メガソーラー発電までの電線の設置について高い料金を課すこと
2.そもそも地域の電力の安定的供給面の問題から認可量を制限すること

2は主に北海道で行われた。これは北海道は太陽光発電に適地というよりは土地が余っているので要地に事欠かないことに原因があったのだが、北海道と本州を結ぶ北本連絡線(電線)の容量限界と、太陽光発電比率を必要以上に高められないことの二つをあげて認可量を減らしたのである。当然孫社長は激怒したが、当たり前の結果である。据え付け許可がでて建設が始まるとFIT価格がその時点のもので決定してしまう。FIT価格が十分に下落するまで据え付け許可を出さないようにするしか方法がないだろう。
そもそも原発停止で高い火力発電に頼っている現状で、さらに高い太陽光発電コストを払えと言われても、よほどの環境保護主義者でないと払いたくはなかろう。電力会社の現状の赤字額を見れば原発の再稼働がないとさらに電力料金が上がることは避けられないのであるし。