敗北の主因

シャープの失敗は07年に堺工場建設を決定したことで、その後の円高リーマンショックによる市場縮小と液晶価格の暴落に耐えられなかったことによる。
よく言われるのは「韓国勢も同じ状態で対応してきているのになぜ日本企業は対応できなかったのか?」
単に通貨の問題である。

07年10月、1ドル=115円74銭、1ドル=915ウォンであった。つまり100円=790.57ウォン(1ウォン=0.1265円)であった。
12年7月末現在、1ドル=78円17銭、1ドル=1,132.89ウォンつまり100円=1449.27ウォン(1ウォン=0.0690円)である。
円・ウォンで見ればウォンは45.5%も減価している。この通貨安を通じたダンピングで韓国は経済危機を乗り切っていたのである。
つまり07年当時の為替レートが継続していればそもそもシャープの戦略は間違っていなかったといえる。

ここで問題なのはリーマンショック後にウォン安が発生することを見抜かねばならなかったのではないか?という疑問である。
97年のアジア通貨危機の時の事象を思い出せば発生は容易に想像できた。しかも07年当時韓国はウォン高に耐えかねてウォン売りドル買いを行いつつあった。
液晶巨額投資はともかくとして日本一極集中での投資はハイリスクであったことは間違いない。
このとき為替リスクを考えるならば外貨借入での台湾での投資等を検討すべきであったと考えられる。
ちなみに液晶パネルの投資を行うならば当時も現在も東アジア以外ではなかなか困難である。
部材生産の集積地は東アジアであり、日本・韓国・中国・台湾以外では考えにくい。TVに関しては作られたパネルを持って行って現地で組み立てる考え方になる。

ちなみに総合家電メーカーではPanasonicSONYがまさに同じことをやって同じ失敗をした。
シャープが今期に損失計上が続いた理由はただ一つで、「前期に固定資産減損処理をしなかったから」である。
シャープは資金リスクを考えて堺工場を分社し、外部からの出資を仰いでいた。もっとも工場が完成する頃には市況が悪化しつつあったのでシャープディスプレイプロダクト(SDP)への出資に応じたのはSONYぐらいであったが。

テレビ事業はリーマンショックがあったとはいえ、エコポイントの影響が大きく、10年11月の駆け込み需要が大きかった(11年3月は駆け込み不発)。
11年7月まではアナログ停波があり、まだ堅調ではあった。問題はその後である。11年夏から欧州経済危機が大きく取り上げられ、先進国での需要は急減した。
PanasonicSONYはこの海外売上減影響が最大の要因となっている。シャープは国内比率が高く(AQUOSブランドは日本で浸透しているが海外シェアは低い)、エコポイントの反動がストレートに販売減になっている。
どちらもきついわけだが、国内の方が一般的に高収益の高価格帯のテレビが売れているので売価が高く、シャープは台数減がよりきつい。